大正から昭和へ

本日は「大正から昭和へ」です。

1926年(大正15)大正天皇が崩御され、皇太子裕仁親王が践祚され、元号を昭和とあらためました。激動の昭和の始まりです。

↓↓↓音声が再生されます↓↓

https://roudokus.com/mp3/Syouwa01.mp3

「普通選挙法と治安維持法」
https://history.kaisetsuvoice.com/Taisyou_Chianijihou.html

からの続きです。

護憲三派内閣の瓦解

大正14(1925)3月29日、普通選挙法が実現しました。

二十五歳以上の「帝国臣民たる男子」に選挙権が与えられ、これまで328万人だった有権者は1240万人に増えました。

しかし。

女性と植民地(朝鮮、台湾、樺太)の人々は除外されたこと、「欠格条項」により、「貧困により公私の救助または扶助を受けている者」は選挙権者からはずされたことなど、課題を残すものでした。

さて、加藤内閣は加藤高明らの憲政会、犬養毅らの革新倶楽部、高橋是清らの立憲政友会の「護憲三派」が連合して成り立っていた内閣です。

その加藤内閣の一番の課題たる、普通選挙法が実現するとすぐに三派間の結束は崩れます。

高橋是清は前々から隠居したいと考えていましたが、大正14(1925)4月3日、ついに加藤首相に辞表を提出。

これを皮切りにゴタゴタした内輪もめを経て、

大正14(1925)8月1日、加藤高明の憲政会単独内閣が成立しました。

その加藤高明首相も1926年(大正15)1月28日に亡くなり、かわって若槻礼次郎内相が憲政会総裁となり首相にも就任しました。

その若槻内閣も与党・野党間の不毛な足の引っ張り合い(朴烈事件、松島遊廓事件)に終始し、なにも建設的なことはありませんでした。

朴烈事件…朝鮮人朴烈(ぼくれつ、パクヨル)が内縁の妻金子文子と共謀して摂政宮(昭和天皇)の殺害を計画した事件。大審院で死刑を宣告されたが、恩赦で無期懲役とされた。若槻首相は朴烈に恩赦を出したのは「不敬」であるとして野党から追求された。

松島遊郭事件…大阪松島遊郭の移転先にからんでの贈賄事件。これも野党による追求のネタになった。

朴烈事件も松島遊郭事件も最終的には与野党間の談合により、なあなあに終わった。

「なんだどの政治家もロクでもねえなあ」
「やっぱり総選挙だよ。せっかく普通選挙法ができたんだから。国民のためにやってくれる内閣を選ばないと」

そういう声が、世論として高まっていました。

しかし、与党も、野党も、いざ総選挙となれば自分たちが選ばれないことは百も承知なので、

スキャンダルでギャアギャアとお互いを攻撃しあう一方、決定的な対立は避け、総選挙にもちこまないように、なあなあの状態を続けていました。

大正天皇崩御

大正天皇は幼少の頃から病弱であられたため、1921年(大正10)11月からは皇太子裕仁親王が摂政をつとめられました。

1926年(大正15)秋から気管支炎と肺炎をわずらい、12月25日早暁、葉山の御用邸でついに崩御されます。

御年47。

翌26日、皇太子裕仁親王が践祚され、元号を昭和とあらためます。大正時代はわずか15年間でした。

昭和という元号の出典は『書経』の「百姓昭明 協和萬邦(ひゃくせいしょうめいにして ばんぽうをきょうわす)」です。

古代中国の伝説的な王、堯(ギョウ)の治世をたたえた文章で、国民全体が徳をあらわし、皆が協力しあうといった意味です。

昭和時代の前半が金融恐慌とファシズムの嵐が吹き荒れる、動乱と殺戮の時代だったことを思うと、これほど皮肉な元号もないように思えます。

漢詩人 大正天皇

大正天皇は明治天皇と昭和天皇という強烈なふたつの個性の間にあってそれほど存在感が強いとはいえません。

大正時代がわずか15年間と短かかったことも天皇の印象を弱めています。

しかし大正天皇は漢詩人としては超一流で、歴代天皇の中でも間違いなく随一でした。

過目黑村
雨餘村落午風微
新綠陰中蝴蝶飛
二樣芳香來撲鼻
焙茶氣雜野薔薇

目黒村を過ぐ
雨余の村落午風(ごふう)微(かすか)なり
新緑(しんりょく)陰中(いんちゅう)胡蝶(こちょう)飛ぶ
二様の芳香(ほうこう)来りて鼻を撲(う)つ
茶を焙(あぶ)る気(き)は雑(まじ)はる野薔薇(やしょうび)に

大意
雨上がりの村落は真昼の風が微かに吹いている。
新緑の陰の中に蝶が飛ぶ
二種類の香がただよってきて私の鼻を打つ
茶を焙る香が、野ばらの香とまじりあっているのだ。

……

次回「昭和の金融恐慌」に続きます。

新発売

1話2分スピード解説『古事記』
https://sirdaizine.com/CD/speedMyth.html

『古事記』(日本神話)を、【1話2分】ていどで、【簡潔に】解説したものです。

聞き流しているだけで『古事記』の物語が頭に入り、覚えられます。

詳しくは
↓↓
https://sirdaizine.com/CD/speedMyth.html

解説:左大臣光永