岩倉米欧使節団(二)イギリス

こんにちは。左大臣光永です。

自粛、自粛のうちに今年の春は過ぎ去っていきますが、いかがお過ごしでしょうか?

本日は「岩倉米欧使節団(二)イギリス」です。前回から、三回にわたって語っています。

明治4年(1871)から明治6年(1873)まで、岩倉具視、木戸孝允はじめ明治政府の首脳部がアメリカ・イギリスはじめ全12ヵ国を巡察しました。長く鎖国体制下にあった日本にとっては、大きなカルチャーショックとなりました。

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岩倉米欧使節団(一)アメリカ
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イギリス巡覧

「見えてきたぞ。リヴァプールだ!」

10日間にわたる大西洋横断の旅を経て、岩倉具視以下の使節団は明治5年(1872)7月13日、アイルランドのクイーンズタウン港に到着。翌14日、リヴァプールに上陸しました。汽車に乗り換え、夜遅くロンドンに到着します。

翌日からまずサウス・ケンジントン博物館(現ビクトリア アンド アルバート博物館)を見学。1851年ハイドパークで開かれた万国博覧会をきっかけに設けられた博物館です。

8月1日、イギリス宮内省の招きでバッキンガム宮殿を見学。ただしビクトリア女王は避暑のため不在でした。翌2日、国会議事堂を見学。イギリス式議会制度について学び、

その後、ウィンザー城、兵器工場、観兵式を見学。文明国における常備軍のあり方について学び、考察します。

文明国が兵備をめぐらすのと野蛮人が戦いを好むのとは似ているように見えてその本意は相反する。野蛮人は好んで自国内部で戦いあうのに対して、文明国が兵備をめぐらすのは外敵を防ぐためである。

国全体の財産を守るには軍備を堅固なものとしない限り外敵を追い払うことは難しい。列強が相対し、大小の差があり、強弱せめめぎあうような状況においては国を守るための兵備を廃する訳にはいかない。文明国に常備軍が不可欠である理由はそこである。

現代語訳縮訳 特命全権大使 米欧回覧実記
角川ソフィア文庫 大久保喬樹 以下、引用部分 同

8月25日、大英博物館を見学。内外の書物、資料、鉱石や化石など、もろもろの展示物を見て、感嘆してこう記します。

博物館を見て回ればその国の文明開化の成り行きが自ずから見て取れるものだ。一国の文明が開けていく成り行きを見てみると、いきなり起こるようなことはない。必ず順序を踏んでいる。先に知識を得た者がそれを後の者に伝え、先に目覚めた者が後の者を目覚めさせることによって徐々に進むのであって、これを進歩というのである。進歩とは古いものを捨てて新しいものを目指すことではない。

9月21日、ニューカッスルでアームストロング砲の開発者、アームストロング博士の経営する工場で、博士みずからの案内を受け、大砲の試射にもたちあいます。

ドゴン、ドゴーーーン

これが!上野で彰義隊を壊滅させたアームストロング砲!その威力!

9月22日、ニューカッスルから4時間ほどの汽車の旅を経て、ヨークシャー州のブラッドフォード着。市の郊外ソルテア村でアルパカの紡織工場を見学。
工場の経営者ソルト氏は利益追求だけでなく町の福利厚生にも力を入れ、かつては荒れ地だった村が大いに活気づいていることに一行は感心します。

10月1日、スタッフォード州バートンという町でビール工場を見学。ここのビールは日本にも輸出されていました。一行はビール・ワインの嗜好品としての素晴らしさに感心しつつ、

「だが日本酒も負けていない。西洋人はまだ知らないだけだ。必ず輸出品の一つとなろう」と思うのでした。

ふたたびロンドンに戻り、10月25日、ロンドン郊外でビスケット工場を見学。

「ビスケットはイギリスでお茶の間に出されるお菓子です」

「…おいしい!…こんなものまで工場で造られるのですか!」

11月2日、海軍病院で、ネルソン提督の血痕の残る軍服を見て使節団は深い印象をおぼえます。

ビクトリア女王に謁見

11月5日、いよいよウィンザー城でビクトリア女王への謁見がかないました。

一行が謁見の間にはいると、女王ははるかな奥におられ、右に次男王子エディンバラ公、ベアトリス王女、左には外務大臣、宮内大臣、侍従武官らが控えていました。

大使岩倉具視が進み出て国書を読み上げ、読み終わって国書を女王に手渡すと、女王はこれを外務大臣に渡して、

「貴国の帝王はつつがなくお過ごしか」

「つつがなく過ごしております」

「当国の滞在は興味深いものでしたか」

「貴国政府、および人民にたいへんな厚遇をいただき、各地を巡覧することができました。たいへん意義深く、喜ばしいことでした」

女王は次男王子エディンバラ公を指し、

「この者が昨年、貴国を巡覧したときには、貴国政府から格別なお心遣いをいただいたとのこと。私からも感謝する次第である」

これで拝謁は終わりとなり、使節一同は三度頭を下げて退場。その後は晩餐会となりました。

大英帝国の闇

フランスに出発する前にロンドンの貧民街を見て回りました。木賃宿、安キャバレー。阿片窟。これはひどい…一同はそのありさまに驚き呆れます。大英帝国の繁栄の影には、こういう現実もある。よくよく知っておかねばならぬ…と。

次回「岩倉米欧使節(三) ヨーロッパ」に続きます。

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NEW 日蓮と一遍(90分)
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武田信玄(一)信濃攻略(71分)
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解説:左大臣光永