応天門の変
こんにちは。左大臣光永です。
ようよう秋も深まってまいりましたが、いかがお過ごしでしょうか?
本日は「応天門の変」について解説します。
応天門の変。平安時代前期に起きた応天門の炎上をめぐる政治事件。
貞観八年(866)閏3月、平安京朝堂院の正門である応天門が炎上。はじめ伴善男の告発により左大臣源信が疑われたが、後に伴善男が告発され、処罰されました。
真相は不明ですが、太政大臣藤原良房が関与し、伴善男らの失脚をはかったと推測されます。
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応天門の変。平安時代前期に起きた応天門の炎上をめぐる政治事件。貞観八年(866)閏3月、平安京朝堂院の正門である応天門が炎上。はじめ伴善男の告発により左大臣源信が疑われたが、後に伴善男が告発され、処罰されることとなった。真相は不明だが、太政大臣藤原良房が関与し、伴善男らの失脚をはかったと推測される。
炎上
ゴオオオーー、ゴオオオオオーー…
「おお~…よく燃えるなあ」
「恐ろしい。放火かしら?」
「大変なことですわねえ」
平安神宮に再現された応天門
貞観8年(866年)閏3月10日夜、朝堂院の南の応天門が炎上します。すぐさま犯人の捜査が行われます。そこへ、大納言伴善男(とものよしお)が、右大臣藤原良相(ふじわらのよしみ)に対して訴えてきました。
「犯人はわかっています!左大臣源信(みなもとのまこと)です。
即刻、源信をつかまえてください」
伴善男 その人物
さて訴えてきた伴善男とは、どんな人物か?
伴善男は古来からの名門・大伴氏の末裔です。長岡京造営使・藤原種継殺害事件て、その主犯と見られて逮捕された大伴継人は、祖父に当たります。淳和天皇の名が大伴皇子といったので、はばかって大伴氏を伴氏と改名(改姓)していました。
伴善男自身も讃岐・美作・伊予の国司を兼任し、山城・伊勢を中心に多くの荘園を持つ大貴族です。
伴善男の風貌は、目はくぼみ、ひげは長くたれ、背が短くやせ細り、みるからに悪賢い印象があったといいます。性格は薄情で、弁舌たくみで、判断が早く、政務のすべてに通じていたといいます。若年にして仁明天皇に可愛がられ、参議に列せられ、出世を重ねていました。
捜査
右大臣藤原良相は参議藤原基経に源信のことを訴えます。基経は養父である太政大臣藤原良房にこれを知らせます。太政大臣藤原良房はしかし慎重でした。
「さしたる証拠も無いのに簡単に捕縛するわけにはいかぬ…」
藤原良房が捜査を行わせていたところ、今度は備中権史生(びっちゅうのごんのしじょう)大宅鷹取(おおやけのたかとり)が訴えてきます。
「犯人は伴善男です。
最初に訴えてきた伴善男こそ真犯人なんです!!」
捜査するほうは、困ってしまいます。
「うーむ…どっちの言っていることが本当なんだ?」
捜査は長引きます。ところがここで事件が起こります。
捜査が行われている最中、告発された伴善男の従者、生江恒山(いくえのつねやま)、伴清縄(とものきよただ)の二人が、告発した大宅鷹取の娘に襲い掛かります。
「われらの主人を密告するとは」
「思い知らせてやる!」
「きゃああああ!!」
こうして、大宅鷹取の娘は無残な姿で殺されてしまいました。
生江恒山・伴清縄の二人はすぐに逮捕され、これにより伴善男に対する疑いはいよいよ深まりました。
逮捕
「白状せい。主人の伴善男が犯人なのだろう」
「応天門を燃やしたのは伴善男なのだな?」
「ううう…」
厳しい尋問の末、二人はついに自白します。
「その通りでございます。応天門に放火したのは
主人の伴善男と、その息子の中庸(なかつね)です」
「動機は?」
「政敵の源信に罪をなすりつけて、
失脚させることでした…」
「やはりな…」
すぐに伴善男の館に捕縛の役人が押し寄せます。
「伴善男。観念せい。すでに自白は取れておる」
「くっ…。はめられた…」
ガックリと肩を落とす伴善男。
9月22日、伴善男・中庸(なかつね)父子は大逆罪に問われるも罪一等を減じて善男は伊豆へ中庸は隠岐島へ遠流、紀夏井ら関係者8人も配流の処分を受けます。善男の有していた土地や家屋もすべて没収されました。
2年後の貞観10年(868年)、善男は配所伊豆で失意のうちに亡くなりました。この事件によって古来の名族大伴氏と紀氏の勢力は没落しました。
最初に告発してきた伴善男が実は犯人だったという事件の概要ですが、犯人が伴善男ということには疑問が持たれています。
この事件で一番得をしたのは藤原良房です。藤原氏の有力な競争相手であった大伴氏・紀氏を排除し、事件後、清和天皇の摂政に就任。姪の高子(たかいこ)を清和天皇に入内させ、また嗣子(跡取り)の基経を中納言に特進させています。
この結果から見るに、すべて競争相手の排除をもくろむ藤原良房が仕組んだことと見れなくもないですが…真相は今日に至るまで不明です。
「伴大納言絵詞(ばんだいなごんえことば)」は応天門の変を題材に平安時代後期に描かれた絵巻物です。
「宇治拾遺物語」114「伴大納言応天門を焼く事」と内容がほぼ重なります。
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