四民平等と地租改正

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四民平等

明治3年(1870)9月、明治政府は平民に苗字を名乗ることを許しました。廃藩置県後の明治4年(1871)8月、華族・士族の散髪・脱刀を「勝手たるべきこと」としました。つまり、髷を切ることも、刀を捨てることも、自由にせよと。自由にせよと言いつつも、実際は強制でした。同月、平民が袴や羽織を着ることを認めました。士族による切り捨て御免を禁じました。また華族から平民に至るまで結婚の自由を認め、華族・士族が平民の職業につくことも認めました。

服装・結婚・職業の自由が認められたのです。翌明治4年(1871)8月には「穢多・非人の廃止」が宣言されました。千年以上にわたる賤民制度はこれで一応終わりました。

こうして「四民平等」が進められていきました。ただし「四民平等」は人道的配慮から出た政策ではありません。外国への体面と、明治政府が全国を画一支配するためでした。今まで穢多・非人とよばれて世からあぶれていた人たちも、平民扱いとなると、そこからも税金を取れるし兵役を課すことができるためです。税金は取り兵役は課すが、そのぶん人間らしい暮らしを保証してやる…などとは政府はカケラも考えていませんでした。

また華族・士族は刑法上の罪を犯しても金を出せば許されるなど、さまざまな特権がありました。また官吏は士族なみに扱い、犯罪を犯しても士族なみにゆるく裁かれました。

つまり「四民平等」といっても名ばかりで、華族・士族・官吏があらたな特権階級になっただけでした。

徴兵令と士族

すでに幕末から長州の大村益次郎らが、国民皆兵による軍政改革を進めていました。明治6年(1873)陸軍卿山県有朋らが徴兵令を発布。身分に関係なく満20歳以上は兵役につく義務を負わせました。

これまでの武士にかわって、国民による軍隊が創設されたのです。しかし負担を強いられた国民の反発は激しく、各地で一揆が起こりました。また士族の間でも、徴兵制によって自分たちの特権が取り上げられたといって、反発が高まっていきます。これが明治9年(1876)佐賀の乱、神風連の乱、秋月の乱、萩の乱、そして明治10年の西南戦争につながっていきます。

地租改正

明治政府が多くの改革を進めていくには財政を安定させる必要がありました。ところが明治政府の財政基盤は徳川時代からそのまま受け継いだもので、ほとんどが年貢米による納税でした。米価は相場によって左右され、安定しません。年貢米を管理・輸送・保存するのも大変です。しかも全国で税率も計算方法も違っていました。全国の画一支配をめざす明治政府としては、きわめて不都合です。そこで政府は土地制度・租税制度の改革に乗り出します。

明治5年(1872)2月、田畑永代売買の禁令を解き、売買譲渡の際、その土地の権利を国家が保証する「地券」を発行し、地主・自作農による土地の所有を認めました。

明治6年(1873)7月、地租改正条例を交付。豊作・不作に関わらず、地価(土地の評価額)の3%を現金でおさめさせること。地価は5年ごとに改定することなどが決まりました。地租改正は数年間かけて全国で行われました。地租改正によって多くの庶民は暮らしが苦しくなりました。幕府時代よりも負担が多くなった者がほとんどでした。そもそも政府が財源を確保するため
に百姓からぼったくろうという発想なので、当たり前です。

「頭きた!」

各地で、激しい地租改正一揆が起こりました。中にも明治9年(1876)の三重・東海大一揆は大規模なものでした。これはいかんと、明治9年(1876)政府は税率を2.5%に下げ、明治13年(1880)地価改定の五年延長を認め、ついで明治17年(1884)地価改定制度そのものを破棄しました。

金禄公債

明治政府は廃藩置県で庶民からさんざんボッタくったにも関わらず、まだ財源が足りませんでした。

華族・士族らに支払う家禄のためです。

明治6年、廃藩置県が全国に行き届いた時点でさえ、華族・士族らは支払う家禄は総支出の29%も占めていました。そこで、家禄支給はやめにする。その代わり、金禄公債(きんろくこうさい)を発布して、毎年少しずつ返すという形にしました。つまり、政府が華族・士族から借金をした形です。これで政府は急場をしのげたわけですが、困ったのが公債を押し付けられた華族・士族でした。

これっぽっちじゃ暮らせない!死ねというのか!しかし政府は何もしてくれない。そこで、士族の中には新聞記者になったり商売をはじめるものもありましたが、いわゆる「士族の商法」で、慣れないことなので多くは失敗しました。

次回「廃藩置県」に続きます。

解説:左大臣光永

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