『古今和歌集』の成立

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延喜5年(905年)、醍醐天皇の勅命で、
日本発の勅撰和歌集『古今和歌集』の編纂が始まります。

「古き歌も、今の世の新しき歌も、よき歌はみな集めて、
歌集を作るのだ。そのほうらの力を貸してくれ」

「ははっ」

撰者として選ばれたのは、

紀友則(きのとものり)
紀貫之(きのつらゆき)
凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)
壬生忠岑(みぶのただみね)

当時を代表する四人の歌人たちでした。

最初は紀友則がリーダーでしたが、
途中で亡くなったようで、
従弟の紀貫之がリーダーを引き継ぎます。

このような勅撰和歌集が編纂されることになった背景として、
894年遣唐使の廃止があります。
長年中国の文化を輸入して、真似をしてきたけども、
ここらで日本独自のものを見直していこうじゃないかと。

8年後の延喜13年(913年)ごろ(異説あり)
『古今和歌集』は完成し、醍醐天皇に献上されました。

約150年間、約130人の歌人、
約1100首(長歌・旋頭歌以外は短歌)を全二十巻に収めます。

歌は内容ごとに春・夏・秋・冬の四季、恋の歌、
別れの気持ちを詠んだ離別歌、
旅の気持ちを詠んだ羈旅歌など13の
「部立(ぶだて)」に分類されました。

『古今和歌集』のこの部立は、後につづく八大集、
二十一代集にも引き継がれていきます。

仮名序

『古今和歌集』には序文が二つあります。

巻頭の紀貫之による序文「仮名序」と、
巻末にの紀淑望(きのよしもち)による「真名序」です。

「仮名序」は仮名で、「真名序」は漢文で書かれているという、
表現の違いのみで、内容はほぼ同じです。
歌は人の心をなぐさめる、ということが書かれています。

特に紀貫之の「仮名序」は有名で、
高校入試などでもよく出題されるところです。
学校で習った記憶がある方も多いでしょう。

やまとうたは、人の心を種として、万の言の葉とぞなれりける。
世の中にある人、ことわざ繁きものなれば、心に思ふことを、
見るもの聞くものにつけて、言ひ出せるなり。

花に鳴く鶯、水に住む蛙の声を聞けば、生きとし生けるもの、
いづれか歌をよまざりける。

力をも入れずして天地を動かし、
目に見えぬ鬼神をもあはれと思はせ、
男女の中をも和らげ、猛き武士の心をも慰むるは歌なり。

●現代語訳
和歌は人の心を種として、いろいろな
言葉の葉が繁ったようなものである。
この世に生きている人は、いろいろな事物に
いそがしく接しているので、
心に思うことを、見るにつけ聞くにつけ、歌に詠むのだ。

花の間に鳴く鶯、水に住む河鹿の声を聞けば、
この世に生きているもので歌を詠まないものがあろうか。

力をも入れずに天地を動かし、
目に見えない死者の霊の心にも訴えかけ、
男女の仲をなごませ、
猛々しい武士の心をもなぐさめるのは歌である。

次回「平将門の乱(承平の乱)」に続きます。

解説:左大臣光永

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