行基の生涯(四)入寂

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こんにちは。左大臣光永です。

先日、建仁寺で住職さまの説法をきいてきました。「輪廻を脱するちゅうことが、仏教の本質ですわ」という部分が印象深かったです。現在はうまい食い物があり、楽しい娯楽があり、誰もが長生きしたい。死んでもまた生まれ変わりたいと思う。しかし古代インドでは違った。奴隷は生まれ変わってもまた奴隷になる。永久に苦役が続く。それは死ぬよりもさらに苦しい。なんとか修行して、輪廻の輪から抜け出したい。仏になりたいと。なるほど、仏教とはそんな所から始まっているのかもなと思いました。

本日は「行基の生涯(四)入寂」です。

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「行基の生涯」過去配信分はこちら
https://history.kaisetsuvoice.com/cat_Nara.html#Gyouki

行基大僧正

天平17(745)正月21日、行基は聖武天皇より大僧正に任じられました。僧として最高のほまれです。行基は78歳になっていました。

ただ行基自身は特に何も思わなかったようです(『大僧上舎利瓶記』)。「弾圧されていたのが今や大僧正さまか…どうもこういうのは苦手だよ」といったところだったでしょうか。

この間、いろいろあって、都は恭仁宮から難波を経て、紫香楽宮へ、さらに平城京へ戻っていました。

行基、大仏造営事業に組み込まれる

大仏造営は平城京の金鐘寺(こんしゅじ)の地で再開されます。金鐘寺は後の東大寺です。いつ金鐘寺から東大寺に名前がかわったのか、正確な時期はわかりません。

天平17年(745)8月23日、聖武天皇は自ら袖に土を入れて運びました。光明皇后および役人たちも土を運び、大仏の御座を固めました。

行基は大仏造営という国家プロジェクトには組みこまれました。信者たちを率いて、大仏造営の費用を勧進してまわりました。その一方で、平城京遷都の天平17年(745)の一年間だけでも摂津国難波に5つも道場(寺)を建てています。

天平17年(745)9月29日、大仏の鋳造が始まりました。

入寂

しかし行基は大仏がまだ完成しない天平21年(749)2月2日、平城京右京の菅原寺(現 喜光寺)東南院で亡くなりました。享年82。

遺体は信者たちによって生駒山で火葬に付されました。墓は現在、奈良県生駒市の竹林寺(ちくりんじ)にあります。

行基四十九院と土木事業

行基は生涯四十九の道場を建てました。摂津に15。和泉に12。山背に9。大和に7。河内に6。「行基四十九院」として伝わってます。

道場とはようするに寺ですが、その中には堂々たる伽藍を持つ本格的な寺もあれば、民家を改造しただけの簡易施設もあったと思われます。『続日本紀』に「寺」ではなく「道場」と書かれているのはそのためでしょう。

現在、行基の建てた道場がもととなった寺は大阪に六・奈良にニ・京都に一・兵庫に一の十院があります。

大阪
久衆園院(枚方市楠葉)
華林寺(堺市八田寺町)
家原寺(堺市家原町)
大野寺(堺市土塔町)
高倉寺(堺市高倉台)
久米田寺(岸和田市池尻町)

奈良
喜光寺(奈良県菅原町)
竹林寺(生駒市有馬町)

京都
泉橋寺(相楽郡山城町)

兵庫
昆陽寺(伊丹市寺本)

また行基は畿内各地で橋・池・溝・用水施設など土木事業を行い、民衆の暮らしをよくしました。木津川にかかる泉大橋(近くに泉橋寺)、大阪府岸和田市の久米田池(近くに久米田寺)、兵庫県伊丹市の昆陽池(こやいけ)(近くに昆陽寺)、大阪府狭山市の狭山池は今も見ることができます(もちろん行基の時代から何度も作りかえられていますが)。

また現存はしませんが、淀川にかかる山崎橋、高橋大橋、兵庫県宇治郷の大輪田船息(おおわだのふなおき)も歴史的に重要なものです。船息とは港です。後に平清盛が整えて大輪田泊(おおわだのとまり)となったことで有名ですね。

聖武天皇、譲位

天平感宝元年(749)7月2日、聖武天皇は譲位し、皇太子の阿部内親王が即位します。孝謙天皇です。時に聖武上皇49歳、孝謙天皇32歳。

大仏開眼会

天平勝宝4年(752)4月9日、大仏開眼供養の儀式が開かれます。天平15年(743)に発願してから9年目のことでした。すでに娘の孝謙天皇に位を譲っていた聖武上皇、光明皇太后、孝謙天皇以下、高位高官が並び、華やかな儀式でした。

奈良の大仏
奈良の大仏

インドの僧菩提僊那(ぼだいせんな)が、大きな筆を持って足場に登ります。筆の緒を、聖武上皇、光明皇太后、孝謙天皇が握られます。

そこで菩提僊那が最後の仕上げとして、大仏に目玉を描き入れると、

ワーーーッ パチパチパチパチ

大仏殿からは、一せいに拍手と歓声が上がります。インドや中国から1000人の僧侶が招かれ、集まった人の数は一万人を越えました。

儀式の後は晴れやか音楽とともに、インドや中国の踊りが披露されます。その賑わいは東大寺の外までも響き渡りました。

行基が生駒山に埋葬されて、三年目のことでした。式典には行基の弟子・景静が参加していました。

明日は「大坂冬の陣」の跡地を歩きます。お楽しみに。

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第一部「飛鳥時代篇」は、蘇我馬子や聖徳太子の時代から乙巳の変・大化の改新を経て、壬申の乱まで。

第二部「奈良時代篇」は、長屋王の変・聖武天皇の大仏建立・鑑真和尚の来日・藤原仲麻呂の乱・桓武天皇の即位から長岡京遷都の直前まで。

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上巻「神代(かみよ)篇」下巻「人代(ひとよ)篇」。

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月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也。

『おくのほそ道』全章の原文と現代語訳による朗読とテキストpdfを含むのCD-ROMに、メール講座「よくわかる『おくのほそ道』」の配信を加えたものです。

解説:左大臣光永

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