芹沢鴨の暗殺

こんにちは。左大臣光永です。ゴールデンウィークも終わり、いつもの日常が戻ってきた感じでしょうか。いかがお過ごしですか?

私はあいかわらず使いにくいwindows8.1に馴れず、えらい苦労しています。OSなんてのはシンプルが一番なんですが、「芸術作品」を作ろうとしたスタッフによって、メチャクチャな製品が作られてしまった例ですね…。困ったもんです。

さてゴールデンウィークも終わったことだし、そろそろ縁起でもない話をしても許されるだろうということで、本日は新選組の第十九回「芹沢鴨の暗殺」をお届けします。

新見錦の切腹

文久三年九月十八日。

この日は朝から雨が降り、昼に一時止んだものの、夕方から土砂ぶりのひどい雨となりました。

壬生浪士組は昼から島原の角屋で会合を行い、会合の後は宴会となりました。店じゅうの芸妓を駆り出して飲めや歌えの大騒ぎとなります。芹沢鴨は例のごとく大酒をあおり、ぐでんぐでんに酔っ払いました。

島原 角屋
島原 角屋

「芹沢先生、大丈夫ですか」

「ううう…今日はもういかん」

「肩をお貸ししますよ」

芹沢鴨は、子分の平山五郎、平間重助(ひらまじゅうすけ)とともに、籠に乗り島原から北にわずか1キロほどしか離れていない、壬生の屯所に戻っていきます。

平山五郎は芹沢と同じく水戸の出身で、国元で花火を扱っているときに事故にしたということで、左目がつぶれて見えませんでした。そのため「片目の平山」と呼ばれていました。その片目の平山が、芹沢鴨に話しかけます。

「芹沢さん、だいぶ荒れていますね。やはり新見さんのことですか」

「くっ…」

芹沢は憎々しげに三百匁の鉄扇をばちりとはじきます。

「新見君はな、江戸を出て以来、俺の朋友だったんだぞ。ワイワイ言いながら共に中山道を歩いてきたのを思い出すよ。それを近藤の奴が。近藤の奴が!」

「新見さんのことは、ほんとうに、ひどい話です」

これより10日前、新見錦は、近藤と土方一味に祇園の遊女屋「山の緒」で、悪行の数々をあげつらわれ、ついに切腹させられました。新見錦は芹沢と同郷の水戸出身で、江戸をたって以来芹沢の右腕のような存在でした。

その新見錦が切腹させられた。しかも自分の預かり知らぬところで。知らせを受けて芹沢はカーーッとなります。しかし近藤のまわりには土方歳三、沖田総司、原田左之介といった強豪がいつも控えており、おいそれと手を出すことはできませんでした。

土方 芹沢に酒をすすめる

「多摩の百姓上がりが調子に乗りおって…まあいい。近藤とはいつか決着をつけてやる」

芹沢鴨は平山五郎、平間重助を両翼に従え、壬生の八木邸に戻ってきました。八木邸には、芹沢の愛妾お梅がいました。お梅は元四条堀川の太物問屋菱谷の妾だったのを、芹沢が強引に奪ってきた女ですが、この頃はすっかり芹沢になついていたようです。

壬生 八木邸
壬生 八木邸

壬生 八木邸
壬生 八木邸

平山と平間は、桔梗屋の小栄(こえい)と輪違屋(わちがいや)の糸里という女を連れてきました。こうして飲み直しとなります。

ふたたび酒がまわっていい気分になってきたころ、カラカラカラと障子が開き、意外な男があらわれました。

「土方!」

「芹沢局長、私も退けてきました。…よろしければご一緒させてください」

「ああん?近藤勇の手下が、俺に何の用だ!飲みたければ一人で勝手に飲め!」

「よしてください芹沢局長。実は私も、最近の近藤のやり方にはついていけないんですよ」

「ふん。ふう~む…まあ入れ」

普段は無口な土方が、この夜ばかりはとても雄弁でした。さかんに芹沢に酒をすすめ、おだてます。だんだん芹沢もいい気分になってきます。

「土方、お前は顔はいいが、愛嬌がなくていかん。俺くらいモテるには、愛嬌が大事になってくる。わかるか」「はい。先生の魅力はそこにあると私もにらんでおりました」…などと、おおいに盛り上がります。

「うう~い…酔った酔った」

すっかり出来上がると芹沢鴨は愛妾のお梅をつれて、床に入ります。平山も同じ部屋で小栄と床につきます。十畳間の真ん中に屏風を立てて、芹沢と平山の布団を仕切ってありました。平間は別室で糸里とともに床につきます。

グガーーー、グガーーー

やがて響きだす芹沢の豪快ないびき。

土方はそれを確認すると、そっと部屋を出ていき、表に控えていた沖田総司、山南敬介、原田左之助の三人に合図します。三人とも頬かむりをしていました。そして土方も頬かむりを巻きます。

襲撃

真夜中。

どかどかどかっ

玄関から侵入してきた沖田総司、山南敬介、原田左之助、土方歳三の四人は、芹沢の眠る奥の十畳間に向かい、

芹沢鴨 暗殺
芹沢鴨 暗殺

かはーーっっ

と障子を蹴破ると、寝所に乱入し、

ズバッ、ズブッ

いきなり平山五郎の首に二太刀斬りつけます。即死でした。

沖田総司は言葉もかけず芹沢に布団の上から一太刀あびせかけます。ぐはっ!賊かあっ!!ばちり目を開けた芹沢は裸のまま体をひねり、枕元に置いてあった鹿角の刀掛けから脇差をぶん取り

でえい

真っ暗闇の中にふるった切っ先が、つっと沖田の鼻の下を斬り、どたーっと倒れる沖田の脇から飛び出した土方歳三がぶんと刃をふるうと、これを芹沢は受けきれず、

ぐはああっ

まともに一太刀くらい、うっは、うはうううと悲鳴を上げながら、縁側へ逃れると障子が閉まっていたもので、べりべり、ばりーーんと縁側のほうに半分敷居からはずれた障子が、柱を軸にぐるり回りこむように通路をふさいだので、芹沢はこれを蹴破り、

よろ、よろよろよろ…

隣の部屋へ逃れようとした時、その敷居際に文机が置いてあり、

がつっ。

があっ!

向こう脛を打ち当てて、ばったーーと倒れたその背中を、

ズバッ、ブスッ、ズブーー…

メチャクチャに斬りつけられ、ついに芹沢は息絶えました。

芹沢が倒れこんだ部屋では、宿の主人八木源之丞の妻と、その小さな二人の子供が寝ていました。そこへこんな騒ぎが起こったのです。いきなり、何が起こったかわかりませんでした。あらためて見ると、あたりは文字通り血の海でした。

「きゃああああああああ」

芹沢の愛妾お梅は、布団の中で素っ裸のまま、首を切断されました。平間重助と糸里の二人は、この混乱の中、いずこかへ逃げ去りました。小栄は折よく便所に行っていて助かったものの、消息は不明です。

永倉新八 疑惑を抱く

二日後の9月20日。壬生の前川邸にて芹沢・平山の告別式が行われます。

壬生 前川邸
壬生 前川邸

壬生浪士組の浪士八十人あまりが紋付袴で参列していました。その他坊主、会津候の家来、芹沢の郷里である水戸藩の者など、おおぜいの関係者が集まる中、近藤が甲高い声で弔辞を読み上げます。

「われらの敬愛してやまない芹沢先生!先生のお人柄の豪快にして、明朗快活であられたことは、われら誰もが知るところです。われらは今、芹沢先生という大きな柱を失い、悲しみに堪えません。しかし、この悲しみを力に変え、われら壬生浪士組は先生の崇高なる志を継ぎ、ますます励み、ますます前進していくのです」

隊士たちはヒソヒソと言い合いました。

「長州の奴らがやったらしいぞ」

「下手人は長州か」

「しかしあの芹沢先生を、いかに酔っていたとはいえ、敵ながらやるのう」

告別式が終わると棺をかついで壬生寺に向かいます。前川邸から壬生寺までは目と鼻の先で、行列の先頭が壬生寺に到着した時、最後尾はまだ前川邸を出ていませんでした。

前川邸~壬生寺
前川邸~壬生寺

しずしずと進む葬儀の列。その中に永倉新八はひそかに思うところがありました。

あの夜。

永倉は島原角屋で飲み続け、そのまま泊まっていったのでした。芹沢が立ち去った後、近藤と土方が目配せをした。その後すぐに、土方は沖田・山南・原田を引きつれて、角屋をあわただしく立ち去った…いかにも不自然で、あわただしい感じでした。その一部始終を永倉は間近で見ていました。

(近藤さん、まさかあんたが…)

永倉の胸に近藤に対する不信感が芽生え始めていました。

新見錦、芹沢鴨が死んだことで局長は近藤勇一人ということになり、以後、壬生浪士組は近藤勇の一手に掌握されます。

次回「長州の間者」お楽しみに。

本日も左大臣光永がお話いたしました。ありがとうございます。

解説:左大臣光永