芹沢鴨の乱暴狼藉

こんにちは。左大臣光永です。週の半ばの水曜日。東京ではすっかり桜も散りつつありますが…お住まいの地域ではいかがでしょうか。

本日は新選組の第十五回「芹沢鴨の乱暴狼藉」です。

芹沢鴨は、豪胆で、ざっくぱらんな好人物でした。学問もあり、けして粗野なわけではありませんでした。しかも神道無念流の使い手であり剣術の腕も相当なものでした。しかし、大きな欠点がありました。酒を飲むと、人格が豹変することでした。

島原 角屋での乱行

島原は壬生浪士組の屯所から南へごく1キロ程度。歩いてすぐです。浪士たちはたびたび出かけては、遊びまくりました。また芸妓を壬生の屯所まで呼び出して夜中まで大騒ぎしました。

壬生村~島原
壬生村~島原

ある時、芹沢鴨以下、浪士組は島原の角屋(すみや)で水口藩の招きにより酒盛りをしていました。廊内の芸妓を全員集めて、ドンチャン騒ぎをします。その中に土方歳三と永倉新八は会計係をしていました。まず土方歳三が気付きました。

「む…これはどうしたことか」

「どうした土方?」

「永倉、よく見ろ。芸妓はたくさん働いているが、角屋の仲居が一人もおらぬだろう」

「あ…なるほど。これはけしからん。芹沢先生が気付いたら、またいつもの癇癪を起こすかもしれんぞ…」

宴もたけなわになった頃。芹沢鴨はすっかり酒がまわり、ぐるぐると頭が回っていました。しかし芹沢先生は陽気な酒ではなく、どよーんと脳内がくもって、不機嫌になってくるのです。目がすわって、あたりを睨みつけます。

とっとっとっと…

芹沢鴨の盃に酌をする芸妓。

「おい」

「はい?」

なんどすか~と聞く暇も与えず、芹沢はまくし立てます。なぜ角屋の仲居が一人もいないのだ。一人も、さっきから姿が見えぬではないかあ。我々を、下に見ているのか。

「許さぬぞ!!」

ドガチャーーン

「きゃああ」「ひいいい」

「そらっ、隊長の乱暴が始まった」

隊士たちはもう慣れっこなので、蜘蛛の子を散らすように角屋を逃げ出します。土方と永倉だけが残って芹沢の行いを見守ります。

ドガチャーン、ドガチャーン

芹沢は「尽忠報国」と書かれた三百匁の鉄扇を振り上げると、目の前の食器や膳や瀬戸物を次々と叩き壊していきます。

「う、ううう…」

うめきながら芹沢はよろよろと廊下に出ると、梯子の手すりに手をかけます。

「やっ」

メキメキメキ…バッガーーン

梯子の欄干を引っこ抜くと、小脇に抱えてドダッ、ドダッ、ドダドダドダーーと階段を駆け下り、最後は転がり落ちるようにして階下に至ると、ズバーーン。帳場に並べてある大酒樽の水口を叩き落します。

じゃぼーーぼぼぼぼ……

勢いよく酒が流れ出すのを、見向きもしないで流し場にダッダッダと侵入し、山と積まれた瀬戸物の類を、持っていた欄干の手すりで

ガチャーン、ガチャーン

片っ端から叩き壊し、粉々にしてしまいます。

「あ…あああ…やめてください。よしてください」

取りすがる店の主人徳衛門に芹沢は、

「そのほう、不埒により七日間の謹慎を申し付ける!!」

言いたいことだけ言うと芹沢はドスドスとふたたび二階に上がり、うわーーっはっはと大笑いすると、

「いやあ愉快愉快。すっかり気が晴れ申した。拙者は一足先に御免」

言い残して帰っていきました。土方、永倉両名は壬生の屯所に戻り、芹沢の行いを近藤勇に報告しました。「ううむ…そろそろ限界か」近藤は腕を組んで、うなりました。

次回「大坂新町での乱行」お楽しみに。

いただいたお便りより

光永隆様、

 毎日楽しく伊勢物語を拝聴いたしております。また本日は百人一首の裏話興味深く読ませて頂きました。古事記など古代のもお語りに大変興味がわい てきました。

私も今年の正月2日で満85歳となり、耳も身障者6号となりましたが、まだ補聴器を使えばよく拝聴できます。今のうちに日本の古典を すべて読み尽くしたいという希望が湧いてきました。今後ともよろしくお願い致します。

ありがとうございます!『伊勢物語』は、私自身、調べていく中で「こんなに面白い作品だったのか!」と、ビックリしました。古事記の後半も、いずれまとめて語っていく予定です。日本の古典は広く深く、汲めども尽きない豊かな泉です。お互いに、楽しみながら、読んでいきましょう。こちらこそ、末永くよろしくお願いいたします。

解説:左大臣光永