大和屋 打ちこわし

こんにちは。左大臣光永です。4日ほど京都・奈良へ
取材に行ってきました。京都高瀬川の桜は満開で、
美しくライトアップされていました。
三条から四条にかけての、一番にぎやかな高瀬川沿いの通りを、
楽しさにかられて、二度、三度と往復してしまいました。
さて、

本日は新選組の第14回
「大和屋 打ちこわし」です。

大坂へ出張していた壬生浪士組は7月には京都に戻ってきましたが、
芹沢鴨の乱暴は、とどまるところを知りませんでした。

この頃、急進的な尊皇攘夷派の藤本鉄石、松本圭堂(けいどう)、
吉村寅太郎らは、天誅組と称して、攘夷活動のための
資金集めをしていました。

資金集めといっても現在では考えられない
メチャクチャな方法によって、です。

天誅組の資金集め

「金を貸せ。攘夷である。
攘夷志士に金を貸さぬは、天子さまにたてつくも同じこと」

などと店先でわめき散らします。散々に、ごねます。

「そんなこと言われても、
貸せぬものは、貸せません」

キッパリ断ったのは仏光寺高倉の油商八幡卯兵衛(やはたうへえ)。

「そうか。これほど頼んでも、だめか」

「お引き取りください」

「左様か」

ばっ!!
志士たちは八幡卯兵衛を千本西野に引っ張り出します。

「ちょ…なんですか。やめてください。
あっ、あああーーーっ」

ズバア

こうして八幡卯兵衛は斬り殺されてしまいます。

「ふん。素直でない商人だ。
わずかな金子を惜しんだばかりに。おい」
「へいっ」

藤本鉄石は手下に命じて八幡卯兵衛の首を運ばせ、
三条橋詰の制札場(せいさつば)に札を立てて、首をさらします。

制札場とは、幕府や藩のお知らせを立てた場所です。

札には大和屋庄兵衛ほか三名の名が挙げられ、
これらの者は私欲をもって暴利をむさぼっている。
ただちに改心せねば、八幡卯兵衛と同じことになるであろうとありました。

「こらあ…えらいこっちゃ」

札を見た大和屋庄兵衛は真っ青になります。
すぐさま金1万両を用立て、天誅組に貸しました。

芹沢鴨 動く

「なに!1万両!」

この話を聞きつけたのが芹沢鴨です。

芹沢は普段から湯水のように遊び金を使いまくっており、
常に金が不足していました。

「そうかそうか。大和屋はそれほど景気がいいのか。
いい話をきいた。天誅組に貸して
壬生浪士組に貸せぬということはあるまい」

8月13日、芹沢鴨は浪士5、6名を率いて
葭屋町(よしやまち)一条通りにある大和屋庄兵衛方を訪ねます。

「たのもう」

「へい?何の御用で」

「我々は会津候御預り、壬生浪士組である。
軍用金を借用すべく参ったのだ」

「へい。あのー、ただいま、
主人は旅に出ておりまして」

「ならばそのほうの一存で構わん。
金を貸せ」

「はあ。いえ、そのようなことは、
なにぶん主人が不在の折ですから、
私どもの一存では、決めかねるんでございますが」

「天誅組には貸して、壬生浪士組には貸せぬと申すかッ!」

「いえ、けして私どもはそんな」

しかし、店では結局貸さないという結論になりました。

「そうかそうか。よくわかった。
後でどうなるか、見ろ」

言い捨てて、芹沢以下引き上げていきます。

打ちこわし

その後、殴りこみに来るわけでもなく、
どうやら諦めたらしいと店の者たちが
ほっと胸をなでおろしたところに、

ドゴーーーン!!

「うわあああっ!!」

突然ものすごい音がして、店の者は何事かと
外に飛び出します。

「な、なな、なにが、どうしたんや」

「打てーーッ」

ドゴーーーン

「ぎゃひい!!」

芹沢鴨は、隊の大砲を引っ張ってきて、
大和屋の土蔵に向けて、ぶっ放していました。

「ややや、やめてください!」

取りすがる店の者を芹沢は、

「やかましい」

ドカア

蹴り倒すと、

「打てーーッ」

ドゴーーン

さらに次の球をぶっ放すと、
火が土蔵から付近の建物にも燃え移り、燃え広がっていきます。

カーン、カーンカーン、カーン、

「火事だアーー火事だアーー」

町の火見櫓では早鐘を鳴らし、火消し役が
わらわらと駆け出してきます。しかし、

「火を消すなーーッ。ただ今芹沢先生が、
奸物どもに天誅を加えておられるのだーーッ」

芹沢配下の若い連中が鉄砲を構え、
バケツ一杯の水でもかけたら射殺す構えを見せたので、
火消し役も何もすることができず、そうこうしているうちに
火はどんどん燃え広がっていきます。

騒ぎの最中に、芹沢は大きな札を立てて、

「当家の主人は大奸物なり。
庶民を苦しめ暴利をむさぼり、外国と交易をなした大罪人である。
よって、その所有物を焼き払う。これ天命なり」

そう書き記すと建物の屋根に登り、広がりゆく騒動を眺めおろし、

「うわーーーっはっはっは!!」

けたたましく笑いました。

まさに、狂気の沙汰でした。

一晩中この破壊活動は続き、朝が来て、昼になり、
午後2時頃、土蔵はすっかり破壊し尽されました。

「愉快愉快」

芹沢は大笑いしながら壬生の屯所に引き上げていきました。

「ひどい…。あんまりだ」

店の者たちは精も根も尽き果て、がっくりと肩を落としました。

さらに芹沢鴨の暴走は続きます。
次回「芹沢鴨の乱暴狼藉」です。お楽しみに。

解説:左大臣光永