大坂力士との乱闘(一)

こんにちは。左大臣光永です。うららかな雨あがりの陽気です。
いかがお過ごしでしょうか?私は明日から三日ほど
京都・奈良へ取材に行ってまいります。
その間、商品の発送ができませんのでご了承ください。
(ご注文は承っております)

本日から、何事も無かったように、
新選組の話の続きです。

「今回は、大坂に下ってもらう!!」

ざわざわ、がやがや…

文久3年(1863年)年6月1日。

京都壬生村の壬生浪士組の屯所にて、
局長芹沢鴨は浪士たちに指令を下していました。

「諸君も知っての通り、京都では
われら壬生浪士の活躍めざましく、
不逞の輩も、簡単にはさわぎを起こせない状態である。

しかし、大阪はどうか!

九州方面から上って来た不逞浪士どもは
京都はやりにくいと見て大阪に足を留め、
同士と気脈を通じあい、よからぬ
企みを練っている。町奉行所だけでは、
これを十分に取り締まれるものではない。

そこで!

今回、会津候より我々壬生浪士組に直々の命が下った。

大坂にて、かかる不逞浪士どもを捕縛せよと!
諸君、心してかかるように」

こうして壬生浪士組から、芹沢鴨、近藤勇、井上源三郎、
沖田総司、永倉新八、斉藤一、平山五郎、野口健司、
島田魁の十人が大阪へ下ることになりました。

壬生浪士組 大坂へ

大阪に下った壬生浪士組一同は、
八軒屋(はちけんや)の船宿・京屋忠兵衛方に泊まります。

6月15日。

朝からじりじりと照りつける暑さで、夕方になっても
室内に入れないほどの暑さで、
壬生浪士組の面々も、さすがに参ってしまいました。

「あつい…」
「これじゃあ、やってられませんよ」
「近藤さん、何とかなりませんか」
「こればっかりはなあ。剣術で暑さを斬り捨てるわけにもいかんし」

浪士たちがぐだーとしている所へ、
芹沢鴨があらわれ、高らかに宣言します。

「これより夕涼みを行う!」

芹沢鴨をはじめとして、
山南敬介、永倉新八、沖田総司、斉藤一、
島田魁、野口健司、平山五郎の八人が
船に乗り込みます。

「まあ、楽しんで来たまえ」
「あれっ、近藤先生は行かないんですか?」
「俺はちょっと調べ物だ…」

近藤勇と井上源三郎だけが、京屋忠兵衛宅に居残ります。

一同のいでたちは、
永倉、沖田、平山、斉藤の四人は麻2の帷子を
着て大小を差していましたが、他の四人は
稽古着に袴で脇差のみを差していました。

ギイ、ギイ、ギイ、ギイ

「おお…来た来た。涼しい風が」
「こりゃあ気持ちいい」

淀川から吹く風に、ようやく生き返った心持になる
一同。しかしどうも船足が安定せず、
向うの岸、あちらの淵へと船は流されます。

「なにをやっとるのだ船頭。
まっすぐ進まんか!!」

「へえ。今夜は思いのほか流れが速う
ございまして」

「そこを何とかするのが船頭の仕事だろうがあああッ」

「芹沢先生、抑えて…」

船は右に左に流されて、
佐賀鍋島藩の蔵屋敷が建つ、
鍋島河岸に流れ着きました。

「う…うう…」

「あれっ、どうしました?斉藤さん」

「どうも腹がいかん」

腹をおさえる斉藤一。
心配する沖田総司。

相撲取りを斬る

「斉藤くん、下痢かね。
仕方がない…。ここからは歩くとしよう。
北新地で少し休むといい」

芹沢の一声で、一同は船を下り、北新地の
住吉楼を目指して歩いていきます。すると、

向うから、大きな相撲取りがぶらぶら歩いてきます。
少し酔っていました。

道の真ん中を無遠慮に歩いている姿に、
芹沢鴨はイラッとします。

「端へ寄れ」

「あぁん?寄れとは何だ」

相撲取りが言い終えないうちに

「やっ」

芹沢は抜き打ちに相撲取りを斬り捨てました。

どさっ

土煙を立てて倒れる、相撲取りの巨体。

「芹沢先生!まずいですよ。いくら何でも」
「ふん!」

芹沢は振り向きもしないで、ぐんぐん
歩いていきます。

一行は北新地・住吉楼を目指して鍋島河岸から
大川沿いに歩いていくと、大川の支流である蜆川にかかる
蜆橋のたもとで、もう一人の相撲取りと出会います。

やはり道の真ん中をふらふらと歩いていました。
「ああん?なんだお前らは」

その声と、態度が、またも芹沢をイラッとさせます。

「取り押さえろ!!」

仕方ないとばかりに八人同時に飛びかかり、
相撲取りを取り押さえると、
その巨体の上に芹沢が馬乗りになり、

「今も一人を斬り捨てた。同じ無礼を働くとは言語道断。
武士には逆らわんことだ。仲間どもに、
よ~く言っておけ」

「ひ…ひいっ。おぼえてろぉッ」

こうして今度の相撲取りは斬らずに、解放しました。

襲撃

その後、北新地の酒楼・住吉屋の二階で一同飲んでいました。
斉藤一の腹痛もようやく治まってきたその時、

「出て来い浪士ども!顔を出せーーっ」

がやがやと言うさわがしい声が外から響きます。

「ん?なんだ騒々しいしい」

カラッ。

芹沢が障子を明けて下を覗くと、仁王のような巨体をした
相撲取りがニ三十人、八角に削った木の棒を携えて、
ギラギラした目つきでこっちをにらみつけていました。

「さあ浪人どもを引きずり出せ。
できないならば、建物ごと、ぶち壊すぞ」

楼の上から芹沢は、

「懲りない奴らだ。武士に対してまたしても無礼を働くか。
今度こそ斬り捨ててやる」

「なんの痩せ浪人風情が」

「殴り殺してやる!」

ガタガタガタッ…

すでに戸をこじ開けて、駆け上ってくる勢いでした。

芹沢はばっと屋根の上に飛び出すと、

「ばかめがア!!」

身を躍らせて地上に飛び降りると、脇差を抜いて身構えます。

次回、「大坂力士との乱闘(ニ)」につづきます。
お楽しみに。

本日も左大臣光永がお話いたしました。
ありがとうございます。

解説:左大臣光永