毛利元就(二) 初陣

毛利元就 先駆け

「百姓らが殺されているではないか。
我に続け!武田元繁・熊谷元直を討ち取るのだ!」

後の老獪な戦略家・毛利元就も、この時は血気さかんな21歳の若者にすぎませんでした。義憤にかられて敵陣につっこんでいきます。

「なに?すでに合戦が始まった?元就さまが先駆けを?
ああっ…何ということか」

知らせを受けて、志道広吉は驚きますが、冷静さを保ち、すぐに多治比猿掛城の毛利の各陣所に通達を出します。

腹違いの弟・相合元綱はじめ、毛利と同盟関係にある吉川家の家臣もはせ参じ、ワアッと集まってきました。

武田勢はその大軍を見て、うぬぬこれでは勝ち目がない。ひとまず退け。有田城まで撤退していきます。これが10月21日。

翌22日払暁。

「この勢いに乗じて有田城を取り戻す!」

毛利元就は軍勢を率いて有田城に移動します。志道広良はじめ相合元綱、井上元兼らも従っていきました。およそその数、武田4000に対し毛利1000。

一方、武田方は…

熊谷元直が500の兵を率いて、有田城下に陣営を築いて、毛利を迎えんとしていました。

「おのれ毛利め、返り討ちにしてくれる」

そこへ毛利の大軍が押し寄せ、

「矢を放て!」
「させるな」

ヒュンヒュンヒュン…

相方の矢が雨のように宙を飛び交います。

しかし、なかなか決着がつかない。

「うぬぬ…これでは埒が明かぬ。ぐずぐずしている間に敵の増援が来たら目も当てられぬ。一気に槍で決着をつけよう。我に続け」

元就はみずから突進しようとしますが、参謀格の志道広良が引き留めます。

「突撃など、私がやります」

バカラバカラバカラバカラ

敵陣に向けて単騎、駈けていく志道広良。

「ああっ、広良!」

あわてて駆け出そうとする毛利元就。

「およしください。志道殿は、大将が先駆はしてはならぬと」

「ええい、離せ!!」

引き留める馬廻りをはねとばして、毛利元就は

バカラバカラバカラバカラ

志道広良の後を追います。

「ええい。こうなったら全軍突撃」

わああーーーーーっ

毛利・吉川の大勢は、武田勢への総攻撃を開始しました。

こうして、

ひゅん、ひゅんひゅん
キン、ずば、カァーーン

矢と刀が飛び合い、斬り合い、大乱戦となります。

毛利勢は必死の思いで、敵の一角を切り崩します。

熊谷元直の最期

「そこかっ、熊谷元直!」

武田方の勇者・熊谷元直は、

「先祖・熊谷直実以来、敵に後ろを見せたことは無いのだ。
かかってこい」

ぶん、ぶうん、ずば、きいん

得意の槍をふるい、戦い戦いしますが、矢を雨と射かけられ、

ずばずばずば

ぐふう。、

と倒れ、ついに最期となりました。

「熊谷元直を討ち取ったぞーー」

一気に士気上がる毛利勢。

武田元繁の最期

熊谷元直討たれる。

その知らせを受けて武田元繁は、

「なに熊谷が!ぐぬぬ…だがまだ数の上では武田が優勢。
必ず勝機はある。毛利・吉川を叩き潰せ」

「おのれ毛利元就の首を討ち取れ。
熊谷元直への弔い合戦じゃ」

武田元繁はみずから駿馬にまたがり、毛利軍に突撃をかけてきます。

どかどかどかーーー

そこで!

「撃て!!」

ひゅんひゅんひゅん、

どすどすどす

ぐはあっ。

どざあ

ばったり。

武田元繁は馬上から真っ逆さまに転げ落ち、討ち取られました。

すぐさま、毛利元就方の井上光政が駆け寄り、

「武田元繁の首を討ち取ったぞーー」

高らかに叫びました。

「ひいいい…大将が討たれた」
「もうダメだ」

どががががかーー

毛利勢は追討戦に入り、武田方はあそこここに首級を挙げられました。

毛利勢、勝利

「勝ったぞ!安芸の弱小領主に過ぎない毛利家が…
安芸の守護・武田に勝った!」

興奮して拳を握りしめたことでしょう毛利元就。

「うむ。この殿ならば、毛利を託するに足る」

アツい目で見つめる志道広良。

永正14年(1517)11月、毛利元就21歳の初陣でした。

一方、敗れた武田家では、武田元繁の死を受けて嫡男の光和が家督を継ぎ、出雲の尼子経久と同盟を強めつつ、毛利元就への反撃の機会をうかがうこととなります。

「若いのにやるのう元就様は」
「そうとも。毛利家をまとめていくのは、元就様しかござらぬ」

そんな感じで、毛利家内部でも元就の人気は高まっていきます。

次回「毛利元就(三) 鏡山城攻略」に続きます。

解説:左大臣光永

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