北条氏の始まり

北条氏といえば、伊豆で挙兵した源頼朝を助け、鎌倉幕府の権限を全国に及ぼすのに大きな功績があったが、三代将軍実朝が殺害されると、半ば政権を奪うようにして、北条氏の権限をしだいに大きくしていった。源氏の政権をのっとった、反逆者であるという見方が強いですね。

そもそも、北条氏とはどこから来たのか?どんな出自なのか?源頼朝が伊豆にいた頃は伊豆狩野川周辺に勢力を持つ地方豪族ですが、もともとは桓武平氏です。少なくとも本人たちは桓武平氏を自認していました。

平忠常の乱

桓武平氏ですから、もともとは桓武天皇から出てるわけです。桓武天皇のひ孫の高望王が臣籍に降下して平高望となった。これが(葛原系)桓武平氏の始まりです。

平高望は上総(房総半島中部)に下り、以後、代々平氏は房総半島で勢力を伸ばしていきました。その間には、平氏同士の争いも何度か起こっています。有名な承平5年(935年)平将門の乱も、平氏同士の権力争いとみなすことができます。

そして平将門の乱より約100年後の長元元年(1028年)、房総半島で平忠常の乱が起こります。平忠常なる者が国司を殺害し、朝廷の倉庫を燃やし、さんざんに暴れていました。そこで召し出されたのが、平直方です。

平忠常も、平直方も、ともに平氏。つまり平氏の起こした不始末は平氏に解決させよ、というわけです。

ところがこの平直方、ちっとも勝てないです。出撃するたびに平忠常にさんざんに打ち負かされます。もうだめです。私にはとうてい、手に負えません。他の者にお命じください。そうか、仕方ないなと次に任命されたのが、清和源氏の源頼信です。武勇の誉高い人物だったようです。

この源頼信が現地に着任し、いよいよ戦いに赴こうとしていた矢先。あれほど暴れまくっていた平忠常がみずから頭をまるめ、降参してきます。武勇のほまれ高い源頼信さまがご着任となれば、私ごときが勝てる見込みはありません。降参いたします。うむ。神妙なことじゃ、

こうして、あれほど手こずった平忠常の乱は、源頼信の着任によって、あっけなく、戦わずして終わりになりました。

平忠常がなぜ戦わずに降伏したかについては色々な説がありますが、とりあえずこの事件で面目丸つぶれなのが、平直方です。自分はどうにもできなかった反乱が、源頼信が着任しただけで、解決したのです。

「ああ…源頼信さま、すばらしいです。あなたこそ、武人の鑑だ。あなたの御嫡男に、わが娘をめあわせたい」

鎌倉と源氏のつながり

こうして源頼信の嫡男・源頼義と、平直方の娘が結婚して生まれたのが、かの有名な、八幡太郎・源義家です。

そして平直方は、源義家に鎌倉の自分の館を譲りました。これが、鎌倉と源氏の縁がはじまった、最初です。それまでは鎌倉は平氏の地だったのが、平直方が源義家に館を譲ったことにより、鎌倉は源氏の地となったのです。

その場所は、現在のJR横須賀線のすぐ西側。寿福寺のあたりだと伝えられます。

そして、源義家の五代目の子孫が源頼朝。平直方の五代目の子孫が北条時政ということになります。

伊豆で源頼朝が平家の代官山木兼隆を殺害し、旗揚げをした。それを助けたのが北条時政です。頼朝と北条時政の関係は、なにもその時ポッとできたものではなく、五代前からの深い因縁が、あったわけです。

さて北条時政は平直方の五代目の子孫といっても、途中の四代の系図は史料によってまちまちで、かなりいい加減です。おそらく平直方以降、落ちぶれて、五代すぎるうちに伊豆の地方豪族におさまり、途中の系図もよくわからなくなっていたんでしょう。

そもそも本当に桓武平氏なのかも怪しい所です。

伝説

ここに一つの伝説があります。

初代北条時政が、江の島の岩屋で子孫繁栄を祈願していました。どうかわが子孫を末永く栄えさせてくださいと。その時すーーと美しい女房があらわれ、

「お前は前世でよい行いをしました。だから今、お前の願いを聞き入れよう。ただし、子孫の行いが悪い時は、その繁栄は七代を過ぎることはあるまい」

ずざーーーーっとそこで、竜の姿に変わり、ざんぶと海に帰っていきました。後には三枚の鱗が残されていた…これが、北条氏の「三ツ鱗紋」となります。建長寺や宝戒寺など、北条氏ゆかりの寺に行くといたる所にあしらってあります。

もちろん、これは伝説であり、史実とはいえませんが、なぜこんな伝説が生まれたのか、という話です。もともと北条氏は桓武平氏を名乗っているとはいっても、出自もよくわからない地方豪族に過ぎないわけです。

その北条氏が、だーーっと出世した。鎌倉幕府の実質的な支配者になったわけです。そこで、うまく説明をつけるため、納得するために、後からこういう伝説が作られたものと思われます。

次回「富士の巻狩」に続きます。

解説:左大臣光永

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